最近の経済情勢とデフレ
近畿財務局総務部 経済調査課長 米澤裕樹
1.最近の経済情勢
(1) 足元の動向は、生産・消費の一部等に持ち直し動きもあるものの、総じて低水準で横這いとなっている。
このような停滞感の背景には以下のリスク要因がある。
1. 生産回復の牽引車である外需の見通しが、世界経済の動向から不明(特に、対イラク戦後の状況、SARSの影響)。
2. 企業収益の回復が設備投資増加に直結しない。
3. 所得・株価の資産価格低下に歯止めがかからない。
4. 金融センターの信頼が取り戻せていない。
(2)一方で、以下の諸要素を考えると以外に底堅い面もある。
1. 世界経済に不透明感はあるものの、アジアへの輸出は好調で、現時点で外需の見通しに極端に悲観的になっている企業は少ない。
2. 構造変化を正面から受け止め、ビジネスモデルの改革を進める企業が増えてきている。
3. 企業収益の改善は改革努力の成果であり、慎重であるものの研究開発や能力増強等の前向きの投資も出てきている。
2.管内経済情勢報告
最近の管内経済動向を見ると、個人消費については一部に持ち直しの動きがあるものの、総じてみると弱めの動 きとなっている。
また、住宅建設は前年を下回っており、公共事業は引き続き低水準で推移している。
一方、民間設備投資は下げ止まりの兆しがみられ、輸出はアジア向けを中心に前年を上回って推移している。
こうした需要動向のもと、企業の景況感は引き続き厳しいものとなっているものの、生産は外需主導によりこのところ増加しており、14年度の企業収益は増益に転じる見込みとなっている。
雇用情勢は、失業率が依然高水準で推移するなど、厳しい状況が続いている。
このように、管内経済は、依然として厳しい状況であるものの、輸出に支えられた生産の増加などからこのところ持ち直しの動きがみられる。
景気の先行きについては、将来の雇用・所得に対する不安や海外情勢の不透明感から慎重な見方が多かった。
(1) 個人消費をみると、大型小売店販売額は、足もと前年をを上回っている。
その内訳をみると、百貨店は天候要 因などもあり一進一退で推移しているものの、スーパーは飲食料品が堅調なことから持ち直しの動きが見られる。
コンビニエンスストア販売額は、全店ベースでみると引き続き前年を上回っているものの、既存店ベースでは競争激化から低調な動きとなっており、足もとでは、高額のハイウエイカードの駆込み需要から前年を上回っている。
家電販売は、パソコンが不振なものの、テレビ及びDVD、洗濯機などが好調なことから持ち直しの動きがみられる。
乗用車販売は、普通車が低調なものの、小型車が好調に推移していることから前年を上回っている。
旅行動向は、海外旅行は米国同時多発テロ事件の影響の動きがみられたが、足もとでは、イラク情勢及びSARS(重症急性呼吸器症候群)の影響により再び大幅に減少しており、国内旅行は弱い動きとなっている。
このように個人消費は、一部持ち直しの動きがあるものの、総じてみると弱めの動きとなっている。
(2) 住宅建設の動向を新設住宅着工戸数でみると、持家と分譲住宅が前年を下回っており、貸家は一進一退の動きとなっていることから、全体では前年を下回っている。
(3) 設備投資をみると、14年度は、製造業、非製造業とも前年を下回る見込みとなっている。
15年度(計画策 定企業ベース)は、非製造業で不動産が増加するものの、運輸、通信・情報などが減少することから前年度を下回っている。
一方、製造業では、電気機械などの増加が前年度を上回り、全産業でもわずかな減少幅にとどまる など下げ止まりの兆しもみられる。
(4) 公共事業を前払金保証請負金額でみると、引き続き前年を下回っており14年度全体でも前年度を下回っている。
(5) 金融情勢を金融機関の貸出状況でみると、企業の設備資金、運転資金とも引き続き低調に推移している。
(6) 企業倒産をみると、件数は依然高水準で推移している。
3.15年度の管内2府4県及び3政令指定都市の公共事業関係予算をみると、総じて前年度を下回っている。
(1) 輸出入を管内通関実績(円ベース)でみると、輸出は、企業のアジアへの国際分業の発展から、アジア向けを中心に半導体電子部品や音響・映像機器部分品などの電気機器が増加しているほか、一般機械や化学製品も増加していることから堅調に推移している。
輸入は、中国からの事務用品などの一般機械や原油価格の上昇で鉱物性燃料が増加しているものの、アジアから の繊維製品や残留農薬問題で中国からの食料品が減少していることから、足もと伸び率が鈍化している。
(2) 産業活動をみると、製造業の生産はこのところ増加している。
繊維は引き続き低調であり、化学は力強さに欠けるものの、半導体電子部品や携帯電話、液晶テレビなどの電気機械が好調に推移しており、鉄鋼は外需主導で引き続き上昇している。
輸送機器は足もと堅調で、一般機械も回復の兆しがみられることなどから、全体ではこのところ増加している。
非製造業は、産業機械や工作機械を中心 にリース業が回復してきているものの、広告が前年を下回っており、ホテルも低調に推移している。
(3) 企業(除く石油・石炭・電気・ガス)の経常損益をみると、14年度下期は、全産業で増益見込みとなっている。
製造業では、その他製造などが損益となるものの、電気機械、鉄鋼などが損益となることから、全体では増益見込みとなっている。
非製造業では、映画・娯楽などが減益となるものの、運輸・通信、建設などが増益となるこ とから、全体では増益見込みとなっている。
14年度通期は、製造業、非製造業とも増益見込みとなっている。
15年度上期は、(計画策定企業ベース)は、製造業、非製造業とも増益見通しとなっている。
(4) 企業景況感を財務省景気予測調査の景気判断BSI(15年1~3月期現状判断)でみると、製造・非製造、大・中・小規模いずれの区分でも引き続き「下降」超となっている。
(5) 雇用情勢をみると、有効求人数の増加などから緩やかに上昇しているものの、完全失業率は依然高水準で推移しているなど、厳しい状況が続いている。
なお、財務省景気予測調査の授業員数判断BSI(15年3月末現状 判断)をみると、製造・非製造、大・中・小規模いずれの区分でも引き続き「過剰気味」超となっている。
また、 現金給与総額は、所定外給与がこのところ増加しているものの、所定内給与が減少していることから、前年を下 回っている。
4.デフレの現状と企業の対応
(1)最近の物価下落の状況
1.消費者物価指数(大阪市)
趨勢としては、平成12年度後半から下落が続いてる。
全体としては、ほぼ全国と同様の動きがみらてれる。
項目別に見ると、
大きく下落している項目
●家具・家事用品・家庭用耐久品(家電・家具等)や、家事用消耗品(洗剤、ラップ、ティッシュペーパー等) によって大きく下がっている。
●教養娯楽・・教養娯楽用耐久品(AV機器、パソコン等)や、教養娯楽用品(スポーツ用品、玩具、カセット、写真フィルム等)によって大きく下がっている。
ー服感や持ち直しが見られる項目
●食品・・平成14年中頃からやや持ち直し
●被服及び履物・・平成14年に入ってやや持ち直し
(2)物価下落の要因
○ヒアリングでは、需要供給両面での構造的要因を挙げる企業が多かった。
●需要面の構造要因
少子高齢化、消費飽和、商品リサイクルの短縮化、流通システムの合理化等によるマーケットの縮小・伸び悩み
●供給面構造要因
急速な技術革新・伝播、過剰供給体質の継続、中国等低コスト供給国の参入
○所属や雇用のマクロ的要因を困難化・複雑化しているのは事実だが、これが主な要因という見方は少なかった。
(3)企業の対応
1.価格よりも価値・・差別化・高付加価値化
2.新商品・新分野での取り組み
3.集中と選択、ビジネスの重点のシフト
4.徹底したリストラ
5.業界再編
6.海外戦略・・成長市場としての重要性と、生産拠点としての活用 困難な状況の中ではあるが、多くの企業において、構造変化前提として着実な取り組みが進められている。
以上、各項目に就いて、統計(グラフ)等を基礎に細部にわたる説明がありました