「わかりやすいナノテクノロジーと中小企業(産官学連携で2010年20兆円を目指す)」
大阪大学産業科学ナノテクノロジーセンター
プロセスファウンドリー室長・客員助教授 村杉 政一氏
1.ナノテクノロジーの重要性
世界のすべての物質はナノメートルスケールの領域で決まる!
(1) 世界の中のあらゆる物質の中で機能が発現する。最小単位がナノメートル。
(2) 機能が発現するナノメートルスケールの領域を制御すると、それより大きいサイズの物質の特製を決めることが可能。
(3) 豊富なバリエーションがある。(新たな物質や可能性のある物質を創出)
2.ナノ領域への2つのアプローチ
(1) トップダウン-大きな物質をナノメートルスケールまで小さく加工して微細化する。
(2) ボトムアップ-物質の最小単位である原子を組み合せて新しい分子にしたり、さらにその分子を組み合わせて超分子にしたり、原子や分子をナノメートルスケールの大きさで組み上げて新しい機能を引き出す。
*可能性を秘めているアプローチである。
3.21世紀に産業革命をもたらす。 科学技術=nanotechnology
サイエンス・テクノロジー・ビジネスの領域がボーダレス(=クロスオバー)化する。
=研究開発のプロセスと実用化・産業化とが密接な不可分な関係になる。
(産業に直結する科学技術 → 産学官連携)
→大きな可能性として=“デファクトスタンダード”が握れる。
4.ナノテクノロジーの機は熟した!
3つの重要な技術革新の流れを一点に合流し、更なる発展をしつつある。
(1) ナノメートルスケールで観察・計測する技術が発展
(2) トップダウン技術とボトムアップ技術とが、揃ってナノメートルスケールの世界に到達
(3) ナノメートルスケールの世界になると、物質が画期的な性質や機能を発揮するという発見
5.ナノメートスケールとは、
・lnm=1/10-9m(=1/10億m)
例:lnmをピンポン球(直径=38mm)に例えると、人間(170cm)のサイズは?
→地球の直径(半径=6,000km)に相当する巨人。
・メートルの単位を基準とすると
(1)1/1,000m =1mm:ホクロ、神経の太さ
(2)1/1,000mm=1m :DNA、分子(原子10個)
(3)1/10 nm=A :原子の直径
6.〈まとめ〉ナノテクノロジーへの期待
【目標と手順】
分子レベルのスケールであるナノメートルの世界を生活や産業に活かすための総合技術である。
(1)原子・分子を直接操作
(2)バイオや化学などの技術統合
(3)半導体などの極微細加工
【期待】
原子や分子から組み上げた新素材や極微小な電子部品などにより、生活に関わる利便性が大幅に向上する。
7.具体的には“気づき・ひらめき・目利き”でシーズとニーズのマッチング
・ 技術シーズの中から応用展開できそうなものをピックアップし、関連する特許調査や技術トレンドなどを捉え、可能性判断をする。
・ その技術を使って何に応用するのか
・ 従来の技術に対してどれだけのメリットがあるのか
・ 事業戦略・特許出願・資金調達などを準備した後、積極的にビジネス化を率先垂範して促進する。
条件:責任者の事業化に対する気迫(熱意と情熱・継続)
8.中小企業とナノテクとの関わり
〈目的例〉
平滑な材料、積み重ね材料、複合化材料、均一な粒径の材料、錆びない合金材料、高強度材料、対摩耗性材料、etc
〈解決策〉
あらゆる分野の研究や開発に必要不可欠な基幹的な科学技術であるナノテクノロジー*を活用して、意図する
材料を111の原子の組み合わせや並べ方により創出する。(21世紀の錬金術)
*ナノメートル(10億分の1m=分子サイズ)スケールでの超微細加工技術
9.企業としてのナノテクノロジーの取り組み
・研究、開発の体制
研究開発体制の見直し
(1) 研究開発投資(規模と基幹)の増大。
(2) 研究開発投資の回収道筋が明確に出来ない
↓
研究開発から事業化までを一貫して一企業で実施し、掛けた研究開発費を超える利潤を得ようとする独占事業の可能性は少なくなる。
(自前主義からの脱皮)
↓
〈社外資源の活用〉
研究開発のアウトソーシング・特許クロスライセンス・堤携・知的財産の商品化
・人材教育
ナノテクノロジーの研究開発には、長期にわたって広範囲な専門知識を必要とする。
(1) 時間的かつ空間的にも広い視野を持っている
(2) 広範囲での技術シーズを提案・調査ができる。
(3) 長時間でのシーズの発展を予測・分析ができる。
↓
独自性を保ちつつ、効率的に推進する体制=ネットワーク化
*一研究室に縛られたオン・ザジョブ・トレーニングからの脱皮
(1) コストパフォーマンス意識の向上=経済原理の徹底
(2) 産官学の連携強化
1)共有化すべき価値観(Ex.知的財産の個人と機関)
2)柔軟な連携
Model=好奇心を原動力として個別の学問領域に閉じて発展する活動
Model2=実用化(課題解決)を原動力として展開され、複数の学問領域が同時に関連する活動
10.産学官で2010年に20兆円を目指す
政府支援によるナノテク振興:平成15年6月16日現在)
| 産業分野と市場規模 | 技術領域 |
| デバイス(17~20兆円) | (1)絶対に破られない暗号通信が可能な量子コンピューター (2)図書館情報に詰め込んだ超小型記憶装置 (3)波長の短い紫外線で素材を微細加工 |
| バイオ(6~8千億円) | 患部に直接投与できる薬剤(DDS) |
| 環境エネルギー(9千億円~1兆7千億円) | (1)有害物質だけを取り込む超高感度環境センサー (2)超微細な穴を利用した手軽な石油製品の分離精製 |
| 材料(6千億円~1兆4千億円) | (1)金属結晶の粒を小さくして高強度化した鋼 (2)極微細化で吸湿性を高めた化学繊維 |
| 加工・計測(8千億円~2兆2千億円) | 排ガス中に含まれ、健康影響が懸念される超微粒子の測定技術 |