「国際交渉 -外国当局とどう向き合うか-」
財務省 近畿財務局財務局長 式部透
現代のグローバル化した経済では、国際ルール作りに如何に関与できるかが大きな重要性をもっています。
講師は、金融行政当局の立場から数々の国際交渉の当事者となってきましたが、今回、特に会計基準の国際化を題材に外国当局との交渉の当事者が何を考え、実際にどのようなことが行われているかを紹介されました。
○ 金融監督の国際的な枠組み
>多国間の枠組み
・ FSF 金融安定化フォーラム(Financial Stability Forum)
金融安定のための12の基準
・ 銀行監督委員会(Basel Committee on Banking Supervision)
証券規制コア・プリンシプル 自己資本比率規制(SIS規制/Base12)
・ IOSCO証券監督者国際機構(Intemational Orgaanization of Securities Commissions)
証券規制コア・プリンシプル 証券犯罪情報交換に係る多国間取極め(MMOU)
・ IAIS保険監督者国際機構(Intemational Association of Insurance Supervisors)
保険コア・プリンシプル ソルベンシー規制
・ IASB国際会計基準審議会(Intemational Accounting Standards Board)
国際会計基準(国際財務報告基準)IAS/IFRS
・ FATF金融活動作業部会(Financial Action Task Force)
金融犯罪・マネーローンダリング防止のための24の勧告
>二国間の枠組み
・ 金融協議・情報交換等
>グローバルスタンダード
・ 金融安定化フォーラムが示す健全な金融システムの鍵
○ 金融監督の国際的な枠組み
○会計基準とは
・ 企業会計における財務諸表の作成に関するルール
・ 企業会計の実務における慣行のうち、一般に公正妥当と認められたものを要約したもの
・ 市場の慣行を踏まえ、各国で独自に発展してきたが、最近は国際的に収斂(コンバージェンス)の動き
国際会計基準(IAS/IFRS)、米国会計基準(USGAAP)
日本会計基準(Japanese GAAP)
>国際会計基準(ISA/IFRS)
・ 設定主体:国際会計基準審議会(IASB、本部・ロンドン)
・ IASBの前身のIASC(国際会計基準委員会)会計基準のグローバルスタンダードを目指してIASを作成し、現在では、米国基準(US GAAP)と並ぶ世界の二大基準となっている。
・ EUにおいては、2005年から域内上場企業の連結財務諸表にIASを義務付け(2002年7月)
・ 豪などその他の国でも採用が拡大(現在、90カ国程度が自国基準として採用)
・ 日本、米国等は、自国基準を維持しつつ、IASとのコンバージェンス(国際的収斂)を指向
>我が国の会計基準
・設定主体:企業会計基準委員会(ASBJ)
・1996年から「会計ビッグバン」を通じて、日本基準は急速に整備
・国際的な会計基準と整合的
・米国基準と多くの類似点(減損会計、投資不動産、研究開発費等)
・4500社を超える日本企業が日本基準に従って財務諸表を作成
・しっかりした監査及びエンフォースメント制度の対象
>国際交渉の経緯
○EUと国際会計基準
・ EUの経済統合(通貨統合:1999年)→資本市場統合
・会計基準統合を必然化 ・ 国際会計基準を2005年1月より、EU企業に強制適用することを決定(2002年)
・ 域外企業には、2007年より、国際会計基準と「同等な」基準を義務付け(2003年)
・ 日米加会計基準の「同等性」評価開始(2004年)
・ 2005年7月 CESR(欧州証券規制当局委員会)の技術的助言
-日米加会計基準は「全体として同等」との評価
-ただし、「重大な違い」(日本基準は26項目)について「補正」が必要
→追加開示コストの予想から、日本企業の上場撤退が相次ぐ
・ 同等性評価の決定の2年延期(2006年10月)2007年問題→2009年問題へ
-日米加加会計基準のコンバージェンスの進展状況を継続的にモニター
>国際交渉の経緯
○米国(SEC)の立場
・ 外国会計基準は数値調整なしには受け入れないとの基本的立場
・ 米国基準と国際会計基準の収斂に向けて基準設定者間で合意(2002年ノーウォーク合意)
・ 「ロードマップ」(2005年4月)により2009年のIAS受入れまでの道筋を示す
・ 米国のおいて外国基準(IASを含む)を数値調整なしで受け入れる条件
1)高品質かつ包括的 2)運用の整合性 3)米国内で広く使用
○日本の立場
・ 交渉における基本スタンス(対EU)
1) 日本会計基準は高品質であり、国際的整合性を持つ
2) 日本会計基準と国際会計基準は収斂の方向
3)追加開示コストは市場の縮小均衝に繋がる
・ 日本基準と国際会計基準の収斂の加速
「会計基準のコンバージェンスに向けて」
企業会計審議会企画調整部会(2006年7月)
○各国市場における現行の外国企業の会計基準の扱い
| 国際会計基準 | 米国基準 | 日本基準 | |
| EU市場 | ○ | △ | △ |
| 米国市場 | × | ○ | × |
| 日本市場 | ○ | ○ | ○ |
(注1)△:現在は受入れ、ただし将来的には同等性評価の結果による ×:調整措置を要求
(注2)日本市場では、会計基準の差異の説明の注記を条件に国際会計基準を含めた外国基準を受け入れた。
○ 外国当局とどう向き合うか
○キーワードは「国益」
○国際交渉の「ねじれ」
・ 相手方の交渉相手は当方のみでない
・ 相手方の要求は必ずしも本当の要求でない
・ 真の敵は他所にいる?
○ 国際交渉に必要なもの
・ 参加と貢献~いつもその場にいること
・ コミュニケーション力~ユーモアをもって発言する
・ マンパワー~参加するにはマンパワーが必要